2月18日 <天皇機関説事件が発生(1935年=昭和10)>

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1935年(昭和10)のこの日、貴族院本会議において、軍人出身の議員菊池武夫が、美濃部達吉の天皇機関説を国体に背く学説であるとして非難しました。

これは昭和時代の出来事です。少し詳しく覗いてみましょう。

これは4分程度で読める記事です。
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1.解説①:天皇機関説とは

 

第二次大戦前の大日本帝国憲法下で、天皇陛下のあり方につき天皇機関説という学説と天皇主権説という学説がありました。

 

天皇機関説は、イェリネック(19世紀ドイツの公法学者)の国家法人説に基づいて、天皇が国家統治の主体であることを否定し、統治権の主体は法人たる国家であり、主権が天皇にあることは自明としながらも、元首たる天皇は国家の最高機関として憲法の条規にしたがって統治権を行使するという学説で、 一木喜徳郎(いちききとくろう)・佐々木惣一・美濃部達吉らが代表的な論者でした。

 

一方、これに対し、天皇主権説は、国家統治の大権が天皇個人に属する無制限の絶対的な権利であるという学説で、穂積八束(ほづみやつか)・上杉慎吉らが代表的な論者でした。

 

天皇機関説は、いわば大日本帝国憲法をできるだけ自由主義的・立憲主義的に解釈した学説で、明治末期以降から昭和初期まで、学界ではもとより、政界・官界でも広く認められ、元老や政府首脳も天皇機関説的な考え方に立って政治の運営にあたってきたのでした。

 

 

2.解説②:天皇機関説事件

 

1930年代初めの内外の急激な変動、とくに満州事変を直接のきっかけとして、日本国内には国家主義(ナショナリズム)の気運が急激に高まりました。

 

内外の現状打破を叫ぶ革新運動は著しく盛りあがり、その主流となったのは、国家主義(右翼)革新の動きでした。国家主義者は天皇が日本の中心であることを強調し、議会(政党)政治・資本主義経済・国際協調外交の打破ないし変革を唱え、軍部と結びつきながら活動を進めていきました。

 

そうした国家主義の高まりのなかで、思想・言論に対する取締りは一段と強化され、マルクス主義はもとより、自由主義・民主主義的な思想や学問も厳しい取締りの対象となったのでした。

 

1933年(昭和8)には、「刑法読本」などを著して自由主義的刑法学説を唱えていた滝川幸辰(たきがわゆきとき)京都帝大教授が大学を追われ(滝川事件)、ついで、1935年(昭和10)に起こったのが、憲法学者の美濃部達吉の天皇機関説が、軍部や国家主義団体から日本の国体に反する学説であると攻撃されて、大きな政治問題となる事件でした。これが天皇機関説事件です。

 

1935年(昭和10)の今日、貴族院本会議で菊池武夫男爵(予備役陸軍中将)が「その機関説は国体に対する緩慢なる謀反……美濃部は学匪(がくひ)」と弾劾 し、岡田啓介首相は「学説の問題は学者に委ねるほか仕方がない」と答弁しました。

これを機に軍部・国家主義者・右翼は、天皇主権説の立場から統治権の主体は天皇であるとして、広範で強力な機関説排撃撲滅運動を展開しました。この背景にあった軍部や国家主義団体の狙いは、天皇機関説を攻撃することで、それを支持する穏健な勢力を打倒することにありました。

 

これに対し美濃部達吉は、2月25日に「一身上の弁明」と呼ばれる演説を行っています。また、真崎甚三郎教育総監の機関説反対を訓示し、更に当時の岡田内閣は2度にわたり、「国体明徴に関する政府声明(国体明徴声明)」を出して統治権の主体が天皇に存することを明示し、天皇機関説を否定して反対派の矛先を交わしました。この同年10月15日の「我国の統治権の主体は天皇にあり」とする 政府の第二次国体明徴声明で運動は終息したのでした。

 

渦中の美濃部達吉は貴族院議員を辞任し、その著書「憲法撮要」「逐条憲法精義」「日本国憲法ノ基本主義」の3冊を発禁処分とされました。その美濃部達吉は、翌年、右翼の銃撃を受け重症を負っています。

 

この天皇機関説事件の際、批判運動に同調した右翼の一部には、天皇機関説の何たるかを理解できない者も居て、美濃部達吉に対して「畏れ多くも天皇陛下を機関車・機関銃に喩えるとは何事か」と批判したそうです。まま、アフォですな。

 

この事件により、大日本帝国憲法における立憲主義の理念が全面的に否定され、日本の立憲政治が軍部により骨抜きにされた、という恥ずべき歴史の一コマでした。

 

 

3.他の年、この日の記事

他の年のこの日には、こんな記事を書いています。こちらも併せて御覧下さい。(記事が先の日付の場合は表示されません。当日にならないと公開しないように予約投稿しているためです)。

 

今日はここまでです。

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