2月22日 <吉野ヶ里遺跡で弥生時代の大規模環壕集落発見(1989年=平成元)>

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1989年(平成元)のこの日、佐賀県の吉野ヶ里遺跡で弥生時代前~後期の国内最大規模の環壕集落が発見されました。

これは平成時代の出来事です。少し詳しく覗いてみましょう。

これは3分程度で読める記事です。
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1.解説

 

環濠集落や高地性集落などの防御施設をもつ集落は、縄文時代には殆どありませんでした。縄文時代の環濠集落としては北海道苫小牧市静川16遺跡など、数例が知られていますが、縄文時代中期のものであり、弥生時代の環濠集落との関連性は無いとされています。

 

弥生時代の遺跡は戦闘による犠牲者が少なからずいた事が、発掘された人骨などから分かっています。この様な、人骨から分かる争いの犠牲者も、縄文時代にはきわめて少ないのです。

 

こうしたことから、集団と集団がぶつかり合い、殺し合う戦争は、日本では弥生時代に始まったとされています。世界的にみても、農耕が始まり、成熟した農耕社会になるとともに、本格的な戦争が活発になった地域が多いのです。農業の発展に伴い増加する人口を支えるために農地を拡大したり、可耕地や灌漑用水の水利権を確保したり、余剰生産物を収奪するといった行為が、農耕社会で戦争が発生した大きな原因であったと考えられています。

 

弥生時代の集落のなかには、その地域を代表するような大規模な環濠集落が、前期後半以降目立つ様になります。愛知県朝日(あさひ)遺跡は弥生時代中期の環濠集落であり、ここでは環濠が住居を幾重にも取り巻き濠のなかに木の枝を鋭く切った切り株を配置したり、濠と濠との間に先を尖らせた抗を斜めに打ち込んで、厳重なバリケードを築いています。奈良県唐古(からこ)・鍵(かぎ)遺跡は、最大時には約30万㎡が濠で囲まれていました。大阪府池上曽根遺跡も約6万㎡が数条の環濠で囲まれた大集落であ、環濠のほぼ中央から、24本の柱で支えられた6.9m×19.6mの巨大な建物や、直径が2mにも及ぶ井戸などが検出されています。

 

そして、今日ご紹介する、佐賀県吉野ケ里遺跡は、弥生時代前期から後期の大集落遺跡で、二重の環壕で囲まれており、外壕で囲まれた範囲は弥生時代後期には南北約1km、東西約0.5km、面積40haにも及びました。

 

吉野ヶ里遺跡は、脊振(せふり)山系からのびた丘陵上にあり、1986年(昭和61)以来3年間かけた発掘調査で、巨大な環濠集落や墳丘墓の全体像が分かりました。

 

環濠は弥生時代前期から掘られていますが、後期になると丘陵全体を覆う, 南北約1km、東西約0.5km、約40haの大環濠へと発展しました。壕の外側には、掘った土を盛り上げて、土塁が築かれました。壕の内部には住居が営まれ、外側には倉庫が建てられました。

 

吉野ケ里遺跡で重要なのは、後期になると、壕の内側にさらに壕をめぐらした、内郭(ないかく)と呼ばれる区画が出現する点です。この内郭には、物見やぐらの様なものや、かなり大規模な建物(身分の高い人々が住む)の跡もみつかっており、その建物は城郭の始まりであるとされています。 吉野ヶ里遺跡にかつて営まれていた集落は、すでに小国の域に達していたと言っても過言ではないでしょう。

 

こうした防備をめぐらした強力な集落は、農業生産をめぐる確執を背景とした争いを経て周辺の集落を統合し、政治的なまとまりを形成するようになります。こうして各地に小国が出来ていったのです。

 

古墳時代になると、環壕集落は消滅します。そのかわり、特別の建物を四角く囲んだ豪族居館が出現します。内郭が豪族居館へと変化したのであり、村全体でなく身分の高い人たちだけを守るようになったのでした。

 

以下に吉野ヶ里遺跡の全景の写真と、その画像へのリンクを貼り付けておきます。現在は建物が復元され、学習や憩いの場として、国営吉野ヶ里歴史公園になっています。

吉野ヶ里遺跡の全景(Wikipediaから無断借用)

 

追記:「環濠」と「環壕」とがあったのにお気づきでしょうか?

水堀をめぐらせた場合に環濠と書き、空堀をめぐらせた場合に環壕と書いて区別してあります。

 

 

2.他の年、この日の記事

他の年のこの日には、こんな記事を書いています。こちらも併せて御覧下さい。(記事が先の日付の場合は表示されません。当日にならないと公開しないように予約投稿しているためです)。

 

今日はここまでです。

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