11月22日 <庄内藩の農民、領知替えに反対の一揆を起こす(1840年=天保11)>

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今日という日はどんな日でしょうか?

日本史の中の出来事を覗いてみましょう。

 

江戸時代の大名領内における農民一揆といえば、

「年貢が高いので軽減して!」

といった要求のものが殆どです。

 

ところが1840年(天保11)の今日、出羽庄内藩で珍しい一揆が起こっています。この出来事は「出羽義民事件(Wikipedia)」とか「三方領知替え反対一揆(日本史広辞典)」などと呼ばれているもので、当時の藩主の酒井家が、越後の長岡に領知替えになるというので、農民たちがこれに反対して、

「藩主を転封させるな!」

といって一揆を起こしたのです。一揆を起こしたのは農民だけではなく、地主も加わって、しかもその代表が江戸に出て幕府に越訴したのでした。

 

事の起こりを見てみましょう。

江戸幕府は、1840年(天保11)に

  • 川越藩松平家 → 出羽国庄内へ
  • 庄内藩酒井家 → 越後国長岡へ
  • 長岡藩牧野家 → 武蔵国川越へ

という三方領知替えと呼ばれる転封(てんぽう)を命じました。転封とは、移封・所替え(ところがえ)・国替(くにがえ)とも呼ばれ、幕府による大名領地の配置替えのことです。それは恩賞的な加増転封、懲罰的な減封転封、行政的なものなど幾つかの理由で行われました。今回の転封の理由は酒田・新潟両港の不取締でした。ところが実はこの出来事の転封は、当時徳川家斉(とくがわいえなり)の子女の縁組み先の大名を優遇する政策がとられ、川越藩が家斉の子の斉省(なりさだ)を養子にしたことを利用して豊かな土地への転封を働きかけた結果でした。川越藩主松平斉典(まつだいらなりつね)は実子を排除してまで家斉の子を迎え、その養子縁組の結果、幕府は川越藩松平家の財政窮乏を打開するために豊かな領地への転封そ指示したのでした。

 

この転封の真の理由を知った庄内藩の領民は

「百姓と雖も二君に仕えず」と宣言して反対運動を展開

(Wikipediaより引用)

し、本間家などの大地主から小前百姓までをふくめた一揆は、たびたび幕府へ越訴するとともに、会津・仙台・米沢・秋田などの諸藩へも出訴しました。その結果幕藩領主内部内部にも有力外様大名をが中心となって転封反対の機運が高まり、幕府は政策を撤回せざるを得なくなりました。将軍家慶は領知替えの強行により大きな混乱が起きるのを避けるため、老中水野忠邦の強い反対を押し切って中止に踏み切りました。幕府が大名に転封を命じながら実行出来なかった、というのは前代未聞の事態で幕府の実力低下、幕府に対する藩権力の自立化を示す結果となってしまいました。いずれにしても幕府の威信は大きく失墜する出来事でした。

 

実は、この庄内藩の藩主は領民から慕われていた様なのです。このことの酒井家の当主は酒井忠器(さかいただたか)でした。先々代の忠温、先代の忠徳とともに、熱心な藩政改革を行っていました。忠温と忠徳とは、酒田の豪商本間光丘(ほんまこうきゅう)を登用して、藩財政の再建に成功していました、忠器もまた民政に温かかったので、天保4年に起こった大飢饉では、庄内藩は一人の餓死者を出さなかったのです。当時庄内藩は表高14万石でしたが、実高は21万石と言われ、忠器らによる藩政改革が功を奏して比較的安定した藩財政だったそうです。また忠器の時代には、藩校の致道館(ちどうかん)が設けられ、こうした民に篤い政治が領民から慕われる要因となっていました。

 

こうした一揆に至った背景には、庄内藩主の仁政を慕う領民の行動としての一面もあり、また、新領主による増徴のおそれと、転封費用の負担転嫁に反対する意識もあって百姓らを一揆に駆り立てたともいえるでしょう。本来であれば、一揆の首謀者は死刑とされますが、この一揆の処罰権限をもつのは助けられた側の主君である酒井家だったので、お咎めはなかったそうです。

 

この領主の危機を救ったのは、このときだけではありませんでした。明治維新直後、新政府が酒井家に対して会津若松か磐城に移るよう命じたときも、再び藩民をあげて反対運動を起こし、この時は70万両の献金で領知替えを免れたのでした。このとき、一貫して

「庄内藩に過酷な罰を下すな」

と情け深い取扱を唱えていたのが、あの西郷隆盛だったそうです。一度ならず二度までも、藩主と領民との信に結ばれた関係があったからこその、他に類を見ない事例かもしれません。

 

今日はここまでです。

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